チョークベリージュースの飲用で、血圧と脂質レベルを改善
チョークベリージュースの飲用で、血圧と脂質レベルを改善
2011年ごろからアメリカでは国をあげてフルーツ&ベジタブルを食べるようにという政策がとられています。これはアメリカ合衆国農務省が打ち出した「私の食事を選ぼう(Choose My Plate)」食事の半分以上をフルーツ&ベジタブルに!というプロジェクト。
これも、単純にフルーツ&ベジタブルを食べてればOKという訳ではありません。日本でもスーパーフードやグリーンスム―ジー、ジュースクレンズなどが、敏感で時代を先取りしている女性のライフスタイルの定番になりつつありますが、フルーツや野菜の特性を知り、生活に取り入れることが大切です。
今日ご紹介するチョークベリーは北アメリカが原産のバラ科アロニア属で、総称「アロニア」という名称でご存知の方も多いと思います。英語ではchokeberry(チョークベリー/チョコベリー)と呼ばれています。近年スーパーフード・ミラクルフルーツとしてよく紹介されている果物でありますね。高い抗酸化作用による健康・美容サポートが期待される他、チョークベリーに含まれるカロテノイドに脂肪分解促進作用が報告されたことからダイエット用としても注目されています。
チョークベリーは大きく3種類に分けられます。熟した実の色から、赤い実のレッドチョークベリー(Red chokeberry: 学名 Aronia arbutifolia)、黒紫色の実はブラックチョークベリー(Black Chokeberry: 学名 Aronia melanocarpa)、この2つを交雑種した、パープルチョークベリー (Purple chokeberry: 学名 Aronia prunifolia)。食用、加工食品として市場に出、私たちが“アロニア”と呼んでいるのは、ブラックチョークベリーです(今回レポートで対象となり、ご紹介しているのはブラックチョークベリーです)。
チョークベリーの主な栄養・効果は第二のアサイーと呼ばれるほど。チョークベリーは熱・凍結に強い性質があり、加工時に失わやすい栄養成分も損傷が少ない状態で摂取することが出来ると評判です。そのため生活に取り入れやすく、ポリフェノール類・食物繊維を豊富に含むほかビタミンやミネラルも果物としてお勧めです。
また今回ご紹介するレポートからも、チョークベリーには、老化(酸化)・生活習慣病予防に役立つことが分かりました。アントシアニンやカロテノイド色素(β-クリプトキサンチン、β-カロテン)などのポリフェノールを豊富に含み、独特の渋み・苦味もポリフェノールが豊富なことが原因で、ポリフェノール総量が果実(生)100gあたり1240mgと非常に多いことから「チョークベリはベリー類で最強の抗酸化力を持つ」とも言われています。そのためチョークベリーは紫外線やストレスなどで増加する活性酸素によって体のサビつき=老化や内臓機能の低下予防などに高い効果が期待されています。アントシアニンは血小板の凝固を抑制することで血液サラサラ効果が期待されているほか、血管拡張作用や毛細血管保護作用など血液循環の改善にも優れた成分であるとされています。β-カロテンは悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の減少に役立ちますし、β-クリプトキサンチンは血糖値コントロールを正常化し糖尿病や高血糖に起因する肝機能障害予防などへの有効性が報告されています。アントシアニン・β-クリプトキサンチン・β-カロテンが複合して働くことで、チョークベリーは高脂血症・糖尿病・動脈硬化・心筋梗塞など様々な生活習慣病の予防に役立つと考えられます。
日本ではチョークベリーのサプリメントを生活に取り入れる方が最も多いかと思います。オーガニック・有機など厳選された食品を扱うスーパーでは、チョークベリージャム、ジュース、アイスクリームなどのお菓子類もありますね。
また苗も販売されており、手もかからず病原菌もつきにくいことから、ご自分で栽培されている方もいらっしゃるようです。暑さにも比較的強いためチョークベリーの収穫は可能のようです。高温・乾燥・風当たりの強い場所であれば果樹の中では初心者でも育てやすいと言われています。自家製チョークベリージュース、また国内産のチョークベリージュースが私たちの朝の定番になる日も近いかもしれませんね。
抗酸化物質を豊富に含む食品を摂取することにより、循環器疾患の発生率低下につながることが、疫学研究で明らかになっています。植物性食品の中では、ポリフェノール含有率が高いことから、ベリー類の果実が最も抗酸化能力を持つ傾向があります。チョークベリー(Aronia melanocarpa, Rosaceae)は、他のベリー類と比較してもポリフェノールを大量に含んでおり、このためより高い抗酸化作用を持っています。
この研究の目標は、日常的なチョークベリージュースの飲用が、正常高値血圧やI度高血圧を持つ被験者の血圧(BP)、生化学的パラメータ、自律神経系の機能に及ぼす効果について評価を行うことでした。以前に論文の著者が健康的な被験者を対象に実施した研究では、チョークベリージュースの飲用で抗酸化酵素の働きが活性化され、膜脂肪酸組成を改善することで、細胞酸化状態にプラスの効果がありました。現研究は、セルビアのベオグラードにあるClinical Hospital Center Bezanijska Kosaで、12名の男性および11名の女性を対象に実施されました。開始から4週間経過すると、総コレステロール、低密度リポタンパクコレステロール(LDL-C)、トリグリセリドの数値が低下しました。ポリフェノールを多く含有するチョコベリージュース飲用は、直接的に活性酸素に作用するだけでなく、内因性の抗酸化力を刺激することで、血管の酸化ストレスを低減し、血圧レベルの改善に効果を発揮します。ポリフェノールが持つこれ以外の循環器保護作用は、一酸化窒素の内皮合成増加に基づく内皮機能の改善を通じて発揮されます。
今回の研究では、ポリフェノールを豊富に含むチョークベリージュースの飲用によって、薬理学上の治療を受けていない正常高値血圧またはI度高血圧を持つ被験者の血圧レベルと脂質状態が改善されました。そして、交感神経作用の疾患を持つ被験者において、血圧の低下がより大きかったため、循環器疾患を予防するためにチョークベリージュースを飲用することは、より高いリスクを抱える被験者に対して、より効果が高くなる可能性があります。
ただしこの研究では、サンプルが小規模で時間も限られていたため、他の従来の使用法および主張の根拠が存在するか否かを判断するには、今後、対照群を用いた臨床試験などの成果から判断する必要性もあります。
(要約・コメント:加藤絹子)