心地よい眠りを導く睡眠学
睡眠は体と脳のメンテナンスタイム
日の出と共に起き、日の入りと共に眠りにつく。自然に沿った暮らしを送っていたひと昔前に比べ、快適で便利になった現代は、夜でも日中と同じように過ごすことが可能となりました。しかし、これらの生活環境の変化により、現代人の生活は夜型化し、睡眠不足や不眠などの悩みを抱える人が急増しています。
そもそも「睡眠」とは何なのでしょうか。睡眠の最大の目的は、体と脳に休息を与えてメンテナンスをすることだといわれています。睡眠には浅い眠りの「レム睡眠」、深い眠りの「ノンレム睡眠」があります。レム睡眠は、呼吸が浅くやや不規則で、眼球がピクピクと動いている状態。脳は活発に動いており、この間に、記憶の整理や定着が行われています。じつは夢を見るのもこの時。一方、ノンレム睡眠は、すやすやと深い寝息を立てて眠っている状態。脳や神経は休んでいます。通常は睡眠の前半にノンレム睡眠が現れ、後半はレム睡眠や浅いノンレム睡眠が多く出現します。睡眠中はこの2つを約90~120分のサイクルで交互に繰り返しながら、疲れた脳や体を回復させたりして、心身の状態を整えているのです。
睡眠前半は深い「ノンレム睡眠」が多く、睡眠後半は「レム睡眠」や浅い「ノンレム睡眠」が増えて、目覚めやすくなる。ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルを「睡眠単位」といい、1セット約90〜120分。
眠りの質を高めるカギは自律神経
眠らないと体調を崩す…… その理由とは?
睡眠には、体のメンテナンス以外にも重要な役割があります。それが「ホルモン分泌」です。中でも、子どもの成長や体の修復にかかわる「成長ホルモン」、ストレスに負けない状態をつくる「コルチゾール」、体内時計を正常に保ち、自然な眠りを誘う「メラトニン」は、体の健康維持・増進にかかわるとても重要な役割を担っています。睡眠が乱れ、これらのホルモンが十分に分泌されないと、思考力、判断力、免疫力低下などあらゆる体の機能が低下してしまいます。心身の健康や若さを維持するためにも、日頃からきちんと質の高い睡眠をとることはとても重要なのです。
とはいえ、近年は「寝ているのに疲れがとれない」、「布団に入っても寝つけない」などの悩みを抱える人も急増しています。では、スムーズな入眠や質の高い眠りを得るためにはどうすればよいのでしょうか。
自律神経を車に例えると、日中などの活動時に働く交感神経経は「アクセル」、休息時に働く副交感神経神経はは「ブレーキ」のようなもの。
体内時計のズレが不眠や寝つきの悪さを招く
寝つきが悪い、眠りが浅いなどの原因の1つに体内時計のズレが挙げられます。体内時計とは、睡眠と覚醒のリズムをコントロールするシステムであり、この働きに連動しているのが自律神経(交感神経・副交感神経)です。特に良質な睡眠には、「休息の神経」といわれる副交感神経が重要。夜間に副交感神経が優位になることで、寝つきがよくなり、心身の休息と回復もしっかり行われるのです。逆に夜になっても交感神経が高まったままだと、不眠の原因に。そのような時は、心身の緊張を解いてリラックスすることを心がけましょう。
夜は副交感神経、日中は交感神経、この切り替えをスムーズに行うことが快眠への近道です。2つの自律神経をバランスよく働かせるためにも、毎日決まった時間に起床し、規則正しい生活習慣で体内時計のズレをリセットすることが大切です。
体内時計の周期は24時間よりも若干長いため、そのズレを調整する役割を担っているのが太陽の光。目覚めたら、カーテンを開け、しっかりと太陽の光を浴びることが大切です。体内時計のズレがリセットされ、自律神経の切り替えもスムーズに働きます。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第44号 2018年6月