菜園レッスン第12回栽培と成分のはなし Ⅰ 収穫部位で抗酸化成分はどう違う?
チャの主成分に注目!
まずはチャに含まれる以下の2つの成分について見ていきましょう。
●カテキン(タンニンの一種)
[渋み成分・抗酸化物質]チャはプリン環アルカロイドの一種のカフェインを葉に1〜5%含有しています。カフェインは葉中ではほとんどがタンニンと結合しています。また、ポリフェノールの一種の縮合型タンニンを10〜25%含有します。このタンニンは主としてカテキン類です。カテキンは成分により4つの種類に分類できますが、その80%がエピガロカテキンガラート(epigallocatechingallate)とエピガロカテキン(epigallocatechin)で(右表参照)、これらの含有比率は抽出する水温によって違ってきます。
●テアニン(アミノ酸の一種)
[甘み成分]アミノ酸の一種テアニン(L-Theanine)を葉に1〜2%含有します。テアニンからカテキンが合成されます。
カテキンの種類 割合(%)
エピカテキン………………………………………………….. 6.4
エピガロカテキン……………………………………………..19.2
エピカテキンガレート………………………………………..13.7
エピガロカテキンガラート…………………………………..59.1
カテキンとテアニンの役割
テアニンは新芽に光が当たると、光合成によってつくられます。テアニンはカテキンの前駆物質であり、光が当たるほどカテキンに変化していきます。カテキンは抗酸化作用が高く、日焼けから身を守る働きがあり光が当たるます。茶葉は、直射日光を受けるほど、日焼けから身を守るための自己防衛策として、抗酸化物質であるカテキンをテアニンから多く合成していきます。すなわち、光が当たれば当たるほど、カテキン含量が高くなり、渋くなるという訳です。
栽培について
チャはかつて、渋くて苦くて飲みにくい「薬」でした。その後、新芽はそれほど渋くも苦くもないことに気づいた先人の知恵によって、新芽を摘んで飲む習慣が広まりました。現在では薬ではなく、嗜好品として日常的に親しまれています。チャの栽培には、寒冷紗やわらなどで遮光して質を向上させる覆下(おおいした)栽培が伝統的に行われています。遮光によって渋みが低下し、うま味が増大します。
遮光の程度によってチャの名称が異なります
碾茶【てんちゃ】
抹茶の原料となる。収穫前30日程、菰や寒冷紗などで茶園全体を約95%遮光して栽培する。主産地は宇治や西尾。
玉露
碾茶同様の方法で収穫前20日程遮光する。主産地は八女。
かぶせ茶
寒冷紗などを木に直接被せる方法で、収穫前3〜10日程遮光する。主産地は伊勢。
収穫時期と品質
葉の収穫、いわゆる茶摘みは「摘採」ともいい、日本では年に2〜4回行われます。1回目の摘採は5月初旬の八十八夜のころで「一番茶」と呼ばれ、最も品質がよいとされます。その後、おおよそ7、8、9月にそれぞれ「二番茶」、「三番茶」、「四番茶」が摘採され、次第に価格が下がっていきます。手摘みの場合、頂芽とその下2枚程度が最上級とされ、下葉まで摘むほど品質は下がります。高い品質とは、「高テアニン、低カテキン」ということ。品質が下がって安くなるほど、テアニン含量は下がり、カテキン含量が高くなります。ティーとして飲む場合、他のハーブでも同じことが言えます。
光のあまり当たっていない新芽
●甘くておいしい高級茶(高テアニン茶)
●抗酸化作用は低い
光をさんさんと浴びた古い葉
●渋い廉価茶
●抗酸化作用は高い(高カテキン茶)
Memo
日本には、アクが強く、硬くて食べにくい植物に対して、光を遮って行う「軟化物(なんかもの)」や、新芽を利用する「芽物(めもの)」と呼ばれる伝統野菜の栽培方法で食べやすくする知恵や技術が発達しています。これらはその繊細な香りやほのかな色彩などが珍重され、日本料理の高級食材となっています。
軟化物、芽物の伝統野菜
ウド、ハマボウフウ、ミツバ、ミョウガタケ、白ダツ、ウルイ、芽イモ、芽ネギ、芽ジソ、芽タデ、カイワレダイコンなど
次回は、外敵から身を守る精油成分と収穫部位のお話しを予定しています。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『HERB & LIFE』 VOL.12:2016年3月