【北の植物】プリムラ 春ですね! 北海道でなければ会うことのできないプリムラ 5 種の元気をお届けしましょう!
ハーブ。ひと言でいえば「人間の暮らしに役立つ自生植物すべて!」。もう少し詳しくいえば「米や野菜のように人間が手をかけて品種改良をしたり計画的な収穫を期待して栽培するのではなく、野生のままのみずみずしいチカラにあふれた植物たちのこと」になるでしょうか。見て、飲んで、香って、育てて笑顔になれば、心も元気、体も健康になるということです。
さて、いよいよ待ちに待った春です。
毎日飲んで気持ちがよくなり、笑顔になれるハーブもいいですが、1年に一度だけしか見ることのできない植物たちのステキな瞬間に感動して笑顔になる。漢方では、感動して心からの笑顔になる=漢方で最も大切な「気の行り」がよくなることであり、西洋医学的にも免疫力アップになることは科学的にも証明されています。
今号は、蝦夷の大地から思わず笑顔で「蝦夷の大地はええぞー!」と叫びたくなるような植物エネルギーを紹介しましょう。
ヒダカイワザクラ(日高岩桜)
Primura hidakana(サクラソウ科)
私の研究テーマのひとつに、重要な薬用植物や貴重な植物たちの新たな自生地探索調査研究があることは前号でお伝えした通りです。
特に日高山脈の太平洋側と十勝側の林道を重点的に探索しているのですが、あるときふと高山植物の種は、山から雪解け水に流され里に下りてきて、そこがその自生環境であれば林道の道端で北海道固有種に出会えるはず!という仮説を立てて貴重な植物たちの自生地探索を続けています。
本誌41号(2017)でも紹介しましたヒダカイワザクラは、少なくとも20万年前にはその存在が確認されており、人類の進化を見守りながら生き続けてきた植物の1種です。
その名の通り日高山脈の固有種であり、植物図鑑には自生地は高山帯の岩場(例えばアポイ岳8合目付近の岩場)とありますが、4月末、とある日高山脈の林道のどんづまりの岩場一面がヒダカイワザクラの花のピンク色で染まっているのを発見しました。
開花時期はアポイ岳8合目のそれよりも1ヵ月以上早く、まさに日高山脈のプリムラ!
テシオコザクラ(天塩小桜)
Primura takedana(サクラソウ科)
ひと言でいえば「白いプリムラ!」。道北の蛇紋岩帯に自生する北海道固有種です。最近の研究ではヒダカイワザクラと兄弟のような関係にあることがわかってきています。
開花時期は日高山脈のプリムラたちよりも1ヵ月以上遅く、5月下旬頃から開花します。
ソラチコザクラ(空知小桜)
Primura sorachiana(サクラソウ科)
ソラチコザクラの名は、石狩川支流の空知川流域で発見されたのが由来です。日高山脈と夕張山地の沢沿いの岩壁が自生地とされています。もちろん、北海道固有種です。
写真の群生地は、林道沿いの岩壁で、やはり 4 月末頃から岩壁一面ピンク色になります。
前号でもお伝えしましたが、日高山脈麓のソラチコザクラの自生地=ミヤマトウキの自世地です。
サマニユキワリ(様似雪割)
Primura modesta Bisset et Moore var. samani- montana (サクラソウ科)
日高アポイ岳周辺だけに自生するプリムラです。ヒダカイワザクラ同様アポイ岳7合目付近で出会えるのですが…、やはり私の予想通り、とある林道の長さ50mの法面、それも螺旋状の林道の3段の法面全部がピンク色に染まっているのを発見したときには、ただただ呆然と立ち尽くすだけでした。
私の仮説はどうやらビンゴ!だったようです。
エゾコザクラ(蝦夷小桜)
Primura cuneifolia var. coneifolia (サクラソウ科)
最後は高山のプリムラを紹介します。
雪融け直後に4月下旬にヒダカイワザクラ、ソラチコザクラを見て感動し、最後は7月中旬、北海道の屋根、大雪山で最後の春を満喫します。
2,000m級の山の上は、夏至を1ヵ月も過ぎた7月中旬が雪融けシーズンです。
写真は2017年7月23日に撮影しました。黒岳から北海岳に向かう雪田の雪融け直後に待ってましたとばかりに咲き誇っていたエゾコザクラの大群です。
ほとんど人通りのない登山道でひとり、雪解けで増水した川のせせらぎを聴きながら…、漢方の説く極上の「天空の気」を胸いっぱい取り込み、目からは極上の植物エネルギーを満喫し、感動の嵐が吹き荒れました!
こんなステキな瞬間を見せてもらったら、もはや笑顔にしかなれませんね!五感を通して地球が見せてくれる感動を摂取し笑顔になる!これが最もお安くて効果の高い病気予防の極意に思えるのは私だけでしょうか。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第43号 2018年3月