襟裳岬の植物エネルギーをお届します!第1回
はじめに
2017年12月、えりも町から初代えりも観光大使に任命されました。
私は、北海道の植物たちを知る修業のために、 2004年以来14年間で襟裳岬に延べ400回以上訪れ、植物たちのステキな瞬間を撮り続けてきました。そして、いつしか襟裳岬の漁師さんたちと懇意になり、今では年間に延べ200人以上の襟裳岬ファンと一緒に襟裳岬周辺に生きる旬の植物たち、そして友人の漁師さんたちが提供してくださる極上の旬の魚介類をえりも町長や漁師さんたちと一緒に食べて飲んで大笑い。漢方の最も基本にして極意である「五感で大地に流れる生命エネルギーを摂取し、心からの笑顔になる!」を実践し続けています。
北海道医療大学主催で私が主宰する生涯学習講座「漢方・薬用植物研究講座 in 襟裳岬」は大型バスで訪れる企画として10年続いていますが、漢方の説く病気予防の極意を実践する出前講座として大変好評です。
かつて、歌手の森進一さんが「襟裳の春は~、何もない春です」と歌った襟裳岬ですが、然に非ず! 何もないどころか、植物たちも人も毎日が命懸け! 便利なモノに囲まれた都会に生きる私たちにとって今最も必要な「生きるエネルギー」の詰まった大地。それが襟裳岬です。
1~2月のアマニュウの氷の華
誌面の許す限り、時系列的に旬の植物エネルギーをお届けしましょう。
北海道固有種で環境省のRDB(Red Data Book:絶滅の恐れのある野生生物の種のリスト)では絶滅危惧種VUランク(絶滅の危険が増大している種)に指定されている希少種、ヒダカミセバヤの新たな群生地調査のために2月の襟裳岬に出かけています。ところがなんと! 想定外のステキなアマニュウ(Angelica edulis、 セリ科)に出会いました(写真1)。
場所は、時に風速40メートルを超す風が吹きつける襟裳岬西側の高さ30メートルの海食崖。まさに氷の華。わずか1日で氷の華が見事に成長しています。
アマニュウの開花時期は7月上旬。断崖絶壁の上にハマエンドウと一緒に咲き始めます(写真2)。
3月のガンコウラン
3月中旬の襟裳岬では、ガンコウランの花が咲き始めます(写真3、4)。
実に小さな花で、特に雌株の花などは直径2~3ミリ程度なので、見つけると運気が上昇すると思い、観察会参加者は必死に探します。
4月下旬は花の密度が濃いエゾエンゴサク
襟裳岬灯台周辺では4月下旬になるとスプリング・エフェメラル(春の短命植物 )の1種エゾエンゴサク(写真5、6)の大群落が現れ、6月下旬まで堪能できます。
襟裳岬灯台そばに咲くエゾエンゴサクの花の密度が高く、まるで「強風に負けないぞ!」と言わんばかりです。
5月中旬からは、道端がお花畑
襟裳岬灯台周辺の道端がいよいよステキな植物エネルギー満載の季節になります。
襟裳岬周辺の植物の特徴は、全ての植物たちが図鑑に掲載されている草丈の3分の1ほどしかなく、キュートなんです。
高山植物のキク科のミヤマアズマギク( 写真7)、ユリ科のマイヅルソウとヒメイズイ、ラン科のハクサンチドリ、スミレ科のスミレ、アブラナ科のハマハナザオ、バラ科のキジムシロなどが渾然一体になったお花畑が現れ、以後11月上旬まで、次々と旬の植物が開花していきます。
6キロメートル離れた百人浜周辺でも6月上旬にはサクラソウ科のクリンソウの大群落(写真8)やハナシノブ科のエゾノハナシノブ(写真9)も登場します。7月上旬になると絶滅危惧種であるバラ科クロバナロウゲやキンポウゲ科のクロバナハンショウヅル、ラン科のトキソウ(写真10)、ヤマトキソウ(写真11)が道端に咲き乱れます。
まとめ
まだまだお伝えしたい植物たちがたくさんいるのですが、誌面に限りがあるので、続きは次号にします。漁師さんたちといただく旬の魚介類のお話もまた今度。
機会があれば、えりも観光大使の私とぜひぜひ襟裳岬にご一緒いたしましょう! 感動という名のココロのクスリを五感で摂取し、心からの笑顔になること間違いなしです。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第44号 2018年6月